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「木下氏の作品」

氏の中のなにが

この執拗な筆の積み重ねを生んでいるのだろう。

これでもかこれでもかと試みが繰り返され

重層する筆の重なりは画面をくまなく覆いつくしている。

そこに感じられる存在感をなんと言おう。

塗りこまれた空は海は山は

物として具体的に迫ってくる。

小ざかしい絵作りなど相手にしない一途な追求がある。

絵はやはり「生き方」なのか。

アトリエの中と違って

自然の中では、

その率直で意志的な人柄もほどけて、

眼前に広がる世界に身を任せる事が出来るようで、

安曇野の油彩によるスケッチにある新鮮さが貴重だ。

そこに感じられる魅力は現場で直接描くという方法ならではのもの。

勿論、不断のアトリエでの研鑽が支えている。

経験を

堅固な「物」として定着しようとする構成への意思は

時として作者の当初の様々な思惑からそれて

独自の世界を生む。

絵画は絵画そのものの法則を持ち自立しようとする。

作者がその機運の中で絵画と一体化した時、その事を、

「絵画が成った」というのかもしれない。

じっくり物と対話しながらの制作は非常に体力を要求する。

続けていって欲しいと思う。

 

鍋島正世記030614