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■講座終了■


木版画は西洋木版画とも言われ、日本の「板目木版」に対し木の年輪を水平に輪切りした面を研磨し、
ビュランという彫刻刀で版面を彫る版画技法である。
18世紀末の英国人、トーマス・ビューイック(1755〜1828)が開発し、
主に書物の挿絵などの印刷媒体として多く利用された。
白黒を基調に精緻で明快な中にもハーフトーン(中間色)が表現でき、
写真技術が生まれるまで隆盛した版表現の一つで日本には明治20年にもたらされた。
この技法の歴史的背景は一言では語れないので、
ここでは私、個人の木口木版画への思いを要約したいと思う。
ビュランは直接、版に線や点を彫り込む道具で、
四角く長い鋼を切り口が菱形状になるように斜めに研ぎ出し、柄に植えたもので、
その刃先を版面に当て前に押し出すように力加減をコントロールしながらV字溝を掘りつける物である。
尖端の形状が異なる物と鋼の太さの種類により、彫りに変化をつけることができる。
ビュラニストとして銅版や木口木版をビュランでひたすら彫ってきたのだが、
常々感じることは、金属や木でも同じ道具を使うにも拘らず、
彫る素材の違いによって喚起するイメージが変化することである。
基本的に銅板は陰刻(彫った線や点が主線になる)の凹版で、
木口は陽刻(彫り残した線や点が主線になる)の凸版という違いは大きいが
、彫る行為よりも素材に触れた瞬間にどうも無意識の内に思考が変換されるようである。
この技法は直接技法ともいい、
版材に刃物で直に彫る為、常に素材に触れていることが特色と言ってもいい。
特に木口木版を制作するときは、鏡面のように研磨された黄楊や椿の木口面に触れ眺めつつ、
百年以上、「時」の流れの中で堅くひきしまった年輪の持つ密度と重みを掌の中で愛でることから始める。
その後、木口面を墨やインクで黒く塗りつぶすことで別の緊張感が生まれる。
「これから闇の中に一条の光を彫るぞ。」と言う自分の意思と精神の張り、
それがビュランの切っ先に伝わったとき、初めての一彫りが入る。
ビュランで光を与え、イメージを再生させる行為は、小さな平面にも拘らず、
明るく彫り抜かれた線や点の集積は次第に小宇宙からマクロな世界へと広がり版と精神は一体化して行く。
私は彫り終えた版木の美しさが一番好きで木口のフィニッシュは彫りにあると思っている。
もちろん刷りは重要だが別の感覚の仕事であり、彫版とは次元が違うと感じている。
このような意識の中、厚さ25mm前後の版木に絵という新たな命を刻み込む喜びは、
この版種の持つ独特な世界で、初めての人でも今までに感じたことのない自己表現を発見し、
体感できると確信している。
講師:三塩英春
○○1982年 東京藝術大学大学院美術研究科版画専攻修了
○○日本版画協会展 準会員賞
○○1985年 版画グランプリ展 賞候補一席受賞
○○1986年 佐賀県現代美術展
○○1991年 ソウル国際版画ビエンナーレ(招待)
○○1993年 日本の木口木版画展-明治から今日まで
○○「板橋区立美術館」
○○1998年 文化庁在外研修(ウィーン国立芸術大学)
○○2001年 イギリス木口木版画協会展
○○「海外部門最優秀賞」
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